気候変動の現状と対策|SDGs達成に向けた日本と世界の実例・対策をわかりやすく紹介

気候変動は21世紀最大の課題の一つとして世界中で注目されている問題です。
気候変動は、人間活動による温室効果ガスの増加が原因で、地球の気候が急速に変化していることを指します。影響は、洪水や干ばつ、異常気象の頻発、海面上昇など、多岐にわたります。
特に、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みの中で、気候変動への対応は重要なテーマです。日本を含む多くの国々が、この問題に対して具体的な対策を講じることで、未来の世代により良い環境を引き継ぐ努力を続けています。

この記事では気候変動とは何か、その原因やリスク、そして日本および世界各地での影響と対策について、わかりやすく解説します。また、SDGs達成に向けた具体的な取り組みや私たちが日常でできる気候変動対策についてもご紹介します。

気候変動とは何か

気候変動とは、地球の気候システムへ長期間にわたって持続的に変化が生じることを指します。地球の気候は自然の要因と人間活動の両方によって影響されますが、近年の気候変動は主に人間活動によるものとされています。
特に、化石燃料の燃焼によって排出される二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)などの温室効果ガスが大気中に増加することが、地球温暖化の主要な要因となっており、気候変動につながります。
これにより、地球の平均気温が上昇し、氷河や極地の氷が融け、海面上昇や異常気象が頻発するようになっています。また、生態系にも重大な影響を与え、多くの動植物種が絶滅の危機に瀕しています。

気候変動の原因・リスク

気候変動の主な原因は、化石燃料の使用による温室効果ガスの増加です。石炭や石油、天然ガスを燃焼すると、大量の二酸化炭素(CO2)が放出される上に、石油・ガスの採掘過程ではメタン(CH4)が漏れ出します。
また、森林伐採も要因のひとつです。森林は二酸化炭素(CO2)を吸収しますが、伐採されることで炭素が放出され、吸収能力が失われます。これにより、大気中の温室効果ガスの量が増加し、地球温暖化が進行します。

このまま気候変動が進んでいくと、異常気象の頻発、海面上昇、農業生産の低下、生態系の破壊など様々な災害が起こるリスクがあります。
またこれら一つひとつの現象が影響しあって大きな災害を引き起こす可能性もあります。

日本と世界における気候変動の影響

気候変動は世界中で異なる形で影響を及ぼしています。この現象は国や地域ごとに異なる気象パターンを引き起こし、社会経済、健康、生態系に大きな影響を与えています。
ここからは、国や地域ごとの具体的な影響と課題を見ていきましょう。

日本の現状と課題

日本では、気候変動の影響が顕著に現れています。特に、近年の異常気象の頻発は深刻な問題です。
気象庁によると、1時間降水量80mm以上、3時間降水量150mm以上、日降水量300mm以上など強度の強い雨は、1980年頃と比較して、おおむね2倍程度に頻度が増加しています。このような大雨の増加により、洪水や土砂災害のリスクが高まっており、住宅やインフラに対する被害が大きくなっています。
夏には猛暑日の増加に伴う熱中症の患者数が急増している点も見逃せません。
さらに、農業では高温や異常降雨の影響を受け、稲の品質低下や果物の収穫量減少など、気候変動の悪影響が顕著に出ています。
それに加えて、海面上昇により沿岸地域の浸水リスクが増していることも懸念されています。

アフリカの影響

アフリカは世界で最もCO2排出量が少ない地域で、世界全体の温室効果ガス排出量の数パーセントしかないにも関わらず、気候変動による深刻な影響が出ており、多くの国々が甚大な被害を受けています。

アフリカにおける気候変動の影響で一番の問題となっているのは、サハラ砂漠の拡大と干ばつです。干ばつが進行することで農業用水の確保が困難になり、農業生産量が激減した結果、食料不足が深刻化することが予想されます。さらには生活用水の入手も困難になり、人口の増加が顕著なアフリカでは一人あたりが利用できる水の量が少なくなることも予想されます。
またケニア異常気象による大雨が原因でダムが決壊し大規模な洪水が発生した事例もあります。この洪水により街中が浸水し日常生活が困難になるなど大きな支障をきたしています。
これらの環境変化は、農村部のコミュニティーにとって生活基盤を揺るがす重大な問題であり、難民問題や内戦の引き金にもなり得ます。

アフリカは温室効果ガスの排出量が少ないにも関わらず大きな影響を受けてしまっているのが現状です。

アジアの影響

アジアでは、気候変動の影響が広範囲にわたり、特に洪水や台風などの自然災害が増加しています。

インドやバングラデシュのガンジス川流域では季節風による豪雨がたびたび発生し、洪水による被害が一層深刻化しています。
東南アジアでは、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムなど、海岸線が長く、河川や海に囲まれた国々は気候変動に特に弱く、海岸線の短い国々より大きな影響を受けています。島しょ部では、海面上昇による浸水や塩害が重大な問題となり、農地が使用不能になったり飲料水の確保が困難になるなどの被害が出ています。
中国では、大気汚染と気候変動が相まって健康問題が悪化し、都市部での熱波多発により熱中症患者が増加するなどの影響が出ています。

各国政府は、再生可能エネルギーの導入や、気候変動への適応を目指した都市インフラの整備を進めていますが、都市化や人口増加に伴う課題も複雑化しています。

ヨーロッパの影響

ヨーロッパでは、気候変動が多岐にわたる影響を見せています。
とりわけ、ヨーロッパ南部での熱波の影響が顕著です。フランスでは2019年に気温が46℃を超え、過去最高を記録するなど私たちの生活に深刻な影響が出ています。

特に農業生産に深刻な影響を与えており、EU域内のオリーブオイル生産量は2023年の6月までの12ヶ月間で過去最低を記録、スペインでは小麦や大麦、米などの作物の生産量が過去10年間で最低水準となっています。
夏の熱波による熱中症患者も増加しており、気候変動の影響が顕著にみられます。
これらの異常気象は、洪水や干ばつといった災害の頻度を高め、インフラへの被害を拡大させています。

特に、ドイツやフランスの大河流域では、大規模な洪水が住宅や農地に甚大な被害をもたらしています。

アメリカの影響

アメリカでは、気候変動による影響が地域によって異なります。

近年、カリフォルニア州やハワイ島では、大規模な山火事が発生しました。この山火事は猛スピードで燃え広がり広範囲を焼き尽くしたため、住民の生活や農業生産に大きな打撃を与えました。
さらに、ハリケーンの増加により、メキシコ湾沿岸地域は洪水や暴風雨の被害を受けています。
またアラスカ州の氷河や永久凍土の融解が進行することで、海面上昇や生態系の変動する可能性があります。

これらの気候変動の影響により、先住民族の生活基盤が揺るがされているだけでなく、都市部では熱波の影響で電力需要が急増し、停電リスクが高まっています。全米各地で再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上、災害対策の強化が進められており、気候変動に適応した都市づくりが求められています。

気候変動に対する具体的な対策

気候変動への具体的な対策は、世界中で多くの国や地域で展開されています。その対策内容は、温室効果ガスの排出削減、エネルギーの効率化、再生可能エネルギーの導入など、多岐にわたります。特に温室効果ガスの排出削減は、気候変動の現状に対応するために不可欠です。
ここからは具体的な対策の取り組み事例についてみていきましょう。

環境問題 -地球温暖化対策

気候変動対策でまずはじめに挙げられるのが地球温暖化対策です。地球温暖化対策では、主に温室効果ガスの排出削減が求められています。化石燃料の消費量を減らし、エネルギー効率の高い技術や再生可能エネルギーを導入することが重要です。

国際的な協力体制 -パリ協定

気候変動対策においては国際的な協力も欠かせません。
代表的な気候変動対策の国際的な枠組みにはパリ協定があり、この協定では世界共通の長期目標として「地球の平均気温の上昇を産業革命前と比較して2℃より低く保ち、可能な限り1.5℃以下に抑えること」を掲げています。
この協定では、すべての国が自主的に温室効果ガスの排出削減目標を設定し、その達成に向けた行動を取ることを求めています。
パリ協定は、法的拘束力のある要素と、各国の自主的な取り組みを組み合わせた柔軟な枠組みであり、国際的な協力を通じて気候変動に立ち向かうための重要なステップとなっています。

日本の取り組み事例

日本での取り組みには以下のようなものがあります。

・デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)

デコ活は、環境省が推進する省エネ・節電活動の一環です。家庭やオフィスでのエネルギー消費を削減し、地球温暖化対策に貢献することを目的としています。

デコ活の具体例として4つのデコ活アクションを掲げています。

電気も省エネ 断熱住宅(電気代をおさえる断熱省エネ住宅に住む)
こだわる楽しさ エコグッズ(LED・省エネ家電などを選ぶ)
感謝の心 食べ残しゼロ(食品の食べ切り、食材の使い切り)
つながるオフィス テレワーク (どこでもつながれば、そこが仕事場に)

その他にも、エネルギー効率の高い家電製品の使用、照明やエアコンの設定温度の工夫、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの利用などが挙げられます。
またデコ活を実践していることを示す「デコ活宣言」では、すでに多くの企業・自治体・団体・個人がデコ活宣言しています。

・ソーラーシェアリング

埼玉県所沢市ではソーラーシェアリングを実施し、地域一体となって再生可能エネルギーの導入を進めています。
ソーラーシェアリングとは、農業用地の上に太陽光発電設備を設置し、農作物の栽培と太陽光発電を同時に行うシステムのことです。 所沢市では遊休農地で実施することで、長期間使用されていなかった農地を再生するだけでなく、周辺農家との連携による地域農業振興につながりました。
ソーラシェアリングによって発電した電力は、地域新電力である「ところざわ未来電力」を通じて所沢市の公共施設に供給されています。 年間発電量は約1,119MWh(一般家庭311世帯分に相当)を見込んでおり、電力の安定した地産地消を実現しています。

脱炭素社会への道

気候変動対策の中でも脱炭素社会の実現は、持続可能な未来を築くために不可欠です。
そのためには再生可能エネルギーの普及が鍵を握ります。風力、太陽光、地熱、水力などの再生可能エネルギー資源を最大限に活用し、化石燃料からの脱却を目指すことが求められます。

具体的な取り組み事例

脱炭素社会へ向けた取り組みには以下のようなものがあります。

【スウェーデン】ゴミ発電

スウェーデンは、ゴミ発電に関して世界をリードする先進国です。 実際にスウェーデンでは排出された家庭ゴミのうち、最終的に処分されるのは約1%になっています。 残りの99%うち約半分はリサイクルへ、残りは焼却施設で燃焼してエネルギーへと変換されます。
具体的には、廃棄物を焼却し、その過程で発生する熱を利用して電力を生成するゴミ発電システムが広く採用されています。
さらにスウェーデンは国内でのゴミ処理能力を超えて他国からもゴミを輸入しており、これによりゴミの量を減らしつつ再生可能エネルギーを増やすという一石二鳥の効果を得ています。

【鹿児島県】屋久島

鹿児島県の屋久島は、自然環境保護と持続可能なエネルギー利用の取り組みで注目を集めています。
屋久島は、世界自然遺産に登録され、ユニークな生態系と豊かな森林資源を持っています。屋久島では、豊富な水資源を活用した水力発電が盛んに行われています。この再生可能エネルギーは、島内の電力需要の多くを賄っており、化石燃料に依存しないクリーンエネルギー供給モデルとして他地域の手本となっています。また、住民や観光客への環境教育も積極的に行われ、全島で環境意識の高い生活スタイルが根付いています。

適応策と緩和策の重要性

これまでご紹介してきた取り組み事例のほかにも、世界中で様々な気候変動対策が実施されています。
これらの気候変動に対する取り組みは、その取り組み内容によって大きく分けて適応策と緩和策の二つに分けられます。

適応策は、現在進行中の気候変動の影響に対応する具体的な対策を指します。
例えば、洪水の被害を軽減するための堤防の強化や、水不足に対応するための干ばつ耐性を持つ作物の開発などが含まれます。適応策は短期的なリスク軽減が主な目的であり、地域ごとに異なる気候変動の影響に適応するための柔軟性が求められます。

一方、緩和策は、温室効果ガスの排出削減を目指した取り組みを指します。再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上、森林の保護と植林などが代表的な例です。緩和策は長期的な視点で進められることが必要で、地球全体の気温上昇を抑えるための重要な取り組みとなります。

この二つのアプローチは互いに補完し合うものであり、持続可能な未来を実現するためには適応策と緩和策をバランスよく実施することが重要です。地球規模での持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、両者の役割は欠かせません。

SDGs達成に向けた取り組み

持続可能な開発目標(SDGs)は、17の目標から成り立ち、その中には気候変動対策が含まれています。
これらの目標は、地球全体の持続可能な発展を支えるために2030年までに達成することを目指しています。達成には各国政府、企業、市民社会の協力が不可欠です。特に気候変動対策は重要で、温室効果ガスの排出削減や適応策の実施が国際的な求められています。

日本の取り組みと目標

日本はSDGs達成に向けて、多岐にわたる取り組みを進行中です。気候変動対策の一環として、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上に注力しています。

具体的な例として、太陽光発電や風力発電の普及が挙げられます。脱炭素社会の実現に向けては、水素エネルギーや電気自動車の導入も進んでいます。
さらに、森林保護や植林活動を実施し、温室効果ガスの吸収量を増やす努力も重ねています。
日本政府は長期的な戦略として「地球温暖化対策計画」を策定し、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を設定しています。地方自治体や企業も独自の計画を策定し、地域の特性に応じた具体的対策を推進しています。

世界の取り組み事例

世界各国でも、気候変動の影響を軽減するための積極的な取り組みが行われています。

デンマークでは再生可能エネルギーの普及が進み、特に風力発電が電力供給の主力となっています。この国はカーボンニュートラルを目指す政策も導入しており、温室効果ガスの削減に努めています。
ケニアでは太陽光発電を利用した小規模エネルギーシステムが導入され、農村部の電力供給が大幅に改善されています。
ブラジルではアマゾン熱帯雨林の保護活動が強化され、違法伐採の取り締まりが徹底されています。

この取り組みにより、生態系の保護と温室効果ガスの削減が大いに期待されています。これらの事例は、各国がそれぞれの課題に対応した適応策と緩和策を実施していることを示しています。

私たちにできること

気候変動は世界的な課題であり、個人レベルでもその対策に貢献することが求められます。私たちが日常生活でできる小さな行動の積み重ねが、大きな変化をもたらす可能性があります。

簡単に取り組める気候変動対策

個人が日常生活で簡単に取り組める気候変動対策はいくつかあります。
エネルギー使用効率を高めるために、省エネ型家電を選び、使用しない際には電源を切るといった小さな工夫が効果的です。
公共交通機関を利用し、自転車や徒歩での移動を増やすことも重要です。
食生活では地元産の食材を選び、食糧廃棄を減らすことが有効です。
家の断熱性を高めることで冷暖房の使用を減らし、エネルギー節約と温室効果ガスの削減に寄与します。

これらの行動は実行しやすく、持続可能なライフスタイルの実現に向けて重要な第一歩となります。

【まとめ】気候変動の現状とその対策について理解しよう

気候変動の現状は、世界各地でますます深刻な課題となっています。地球全体で平均気温が上昇し、異常気象や自然災害の増加、海面上昇などが報告されています。その主な原因は、人間活動による温室効果ガス、特にCO2の増加にあります。化石燃料の利用や森林伐採がこれに大きく関係しています。
これに対して、世界中でさまざまな対策が講じられています。再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上、植林活動などが具体的な対策として進められています。さらに、持続可能なサプライチェーンの構築や、個人レベルで取り組めるエコな行動も重要です。
異なる地域で異なる影響があるため、それぞれの地域に適した対応策も求められます。以上の情報をもとに、私たち一人ひとりがこの問題を自分事として捉え、行動を起こすことで、持続可能な未来への一歩を踏み出すことができます。