自動車の排気ガスが及ぼす影響とは?地球環境と人体を守る対策を紹介

私たちの日常生活に欠かせない自動車ですが、その排気ガスが地球環境や私たちの体に様々な影響を与えていることをご存知でしょうか。排気ガスには地球温暖化の原因となる物質や、人の健康に悪影響を及ぼす有害物質が含まれています。

この記事では、自動車の排気ガスが引き起こす環境問題や健康被害、そしてそれらを軽減するための対策について詳しくご紹介します。自動車が及ぼす影響を正しく理解し、持続可能な社会の実現に向けた対策を考える一助となれば幸いです。

自動車の排気ガスとは

自動車は、燃料をエンジン内で燃焼させることで動力を得ています。この燃焼の過程で排出されるガスが排気ガスです。排気ガスには、燃料が完全に燃焼した際に発生する二酸化炭素や水蒸気の他に、燃焼条件などによって一酸化炭素や炭化水素、窒素酸化物といった有害物質が含まれます。
これらの排ガスの中の有害物質が、大気汚染や様々な環境問題、そして人体への影響を引き起こす原因となります。

排気ガスに含まれる成分

自動車の排気ガスには、様々な成分が含まれています。
主な成分としては、石油や石炭などを燃焼すると発生する二酸化炭素(CO2)、不完全燃焼によって発生する無色無臭の有毒な気体である一酸化炭素(CO)、燃焼が不完全な炭素と水素が結合した炭化水素(HC)、高温燃焼時に空気中の窒素と酸素が結びついて生成される窒素酸化物(NOx)があります。
また、軽油を燃料とするディーゼル車からは、主に硫黄分が燃焼して発生する二酸化硫黄(SO2)や、燃焼しきれなかった炭素などが粒子となって排出される粒子状物質(PM)が多く含まれます。PMの中でも特に粒径が小さいPM2.5は、呼吸器の奥深くまで入り込むため健康への影響が懸念されています。近年は中国で問題になっており日本においても無視することはできません。これらの成分は、大気中で化学反応を起こし、光化学スモッグや酸性雨の原因となることもあります。
これらの物質によって汚れた空気は、環境や人体に様々な悪影響を及ぼしています。

排気ガスが環境へ与える影響

自動車の排気ガスは、地球環境に対して多岐にわたる影響を及ぼしています。その中でも特に深刻な問題として挙げられるのが地球温暖化、大気汚染、酸性雨による動植物へのです。これらの環境問題は相互に関連し合いながら、地球上の生態系や私たちの生活基盤に悪影響を与えています。

地球温暖化

自動車の排気ガスに含まれる二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化の主な原因とされる温室効果ガスの一つです。大気中のCO2濃度の上昇は、地球の平均気温を上昇させる効果があり、これが気候変動や異常気象を引き起こす要因となります。産業革命以降、化石燃料の使用が増加し、それに伴い大気中のCO2濃度も増加の一途をたどっています。自動車は、日常生活や経済活動に不可欠な存在ですが、化石燃料を燃焼させる限り、CO2排出は避けられません。
家庭からのCO2排出量のうち、自動車からの排出量が大きな割合を占めていることからも、自動車の使用方法を見直すことが地球温暖化抑制の鍵となります。

空気の汚染

自動車の排気ガスには、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、粒子状物質(PM)などの大気汚染物質が含まれています。これらの物質は、ぜんそくや気管支炎といった呼吸器系の疾患、肺がんなどの健康被害を引き起こす可能性があります。特に東京や大阪など都市部では交通量が多いため、自動車の排気ガスが大気汚染の主要な原因となり、これらの汚染物質の濃度が上昇しやすい傾向があります。
排気ガス中の汚染物質は、大気中で化学反応を起こし、光化学スモッグや酸性雨といった二次的な大気汚染を引き起こすこともあります。光化学スモッグが発生すると、目がチカチカしたり、のどが痛くなったりといった健康被害が生じることがあります。

動植物への影響

自動車の排気ガスに含まれる有害物質は、動植物にも深刻な影響を及ぼします。例えば、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)は、酸性雨の原因となり、土壌や湖沼を酸性化させます。これにより、魚類やその他の水生生物の生息環境が悪化し、生態系に悪影響が及ぶ可能性があります。
また、酸性雨は森林の樹木にもダメージを与え、生育を阻害したり、枯れさせたりすることもあります。さらに、排気ガスに含まれる有害物質が植物の葉に付着したり、大気汚染によって生成される光化学オキシダントが植物の呼吸を妨げたりすることで、植物の生育不良や枯死を引き起こすこともあります。これらの影響は、生態系のバランスを崩し、生物多様性の損失につながる可能性があります。

排気ガスが与える人体への影響

自動車の排気ガスは、私たちの体にも様々な悪影響、すなわち健康被害をもたらす可能性があります。排気ガスに含まれる有害物質は、呼吸を通じて体内に取り込まれ、様々な臓器に影響を及ぼします。特に、呼吸器系や循環器系への影響が懸念されており、既存の疾患を悪化させる可能性もあります。

目や呼吸器への影響

自動車の排気ガスに含まれる有害物質は、目や呼吸器に対して直接的な刺激を与えることがあります。例えば、光化学スモッグの原因となる光化学オキシダントは、目の痛み・かゆみやめまい、のどの痛み・咳などの症状を引き起こすことがあります。
また、粒子状物質(PM2.5など)は、非常に小さいため肺の奥深くまで入り込み、気管支炎やぜんそくといった呼吸器疾患の原因となったり、症状を悪化させたりすることがあります。
さらに、長期間にわたって排気ガスにさらされることで、肺機能の低下やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性的な呼吸器疾患のリスクが高まる可能性も指摘されています。大気汚染がひどい状況では、外出時にマスクを着用するなどの対策が有効です。

子どもへの影響

自動車の排気ガスは、特に発達段階にある子どもに与える影響が懸念されています。子どもは大人に比べて呼吸量が多く、地面に近い場所で活動することが多いため、汚染された空気をより多く吸い込んでしまう可能性があります。排気ガスに含まれる有害物質への曝露は、ぜんそくやアトピー性皮膚炎といったアレルギー疾患の発症リスクを高めたり、症状を悪化させたりする可能性が指摘されています。
また、呼吸器系の発達に影響を与え、将来的に呼吸器系の疾患にかかりやすくなる可能性も懸念されています。妊娠中の母親が排気ガスに曝露されることが、生まれてくる赤ちゃんに健康上の影響を与える可能性も示唆されており、子どもたちを排気ガスの悪影響から守るための対策が重要となります。

日本の排気ガス排出量の現状

日本における温室効果ガスの排出量のうち、運輸部門からの排出量が一定の割合を占めており、その中でも自動車からの排出が大きな部分を占めています。
環境省のデータによると、日本の温室効果ガス排出量は減少傾向にありますが、運輸部門からの排出量は依然として削減が求められています。運輸部門からのCO2排出量の内訳を見ると、旅客輸送と貨物輸送があり、それぞれで排出量に違いがあります。特に都市部では自動車の交通量が多いため、地域ごとの排出量に差が見られます。

京都議定書目標達成計画に基づき、日本でも自動車排出ガスの削減に向けた様々な取り組みが行われてきました。過去と比較すると、自動車単体からの有害物質排出量は規制強化により大幅に削減されてきましたが、自動車保有台数の増加や走行距離の伸びにより、依然として総排出量は多い状況にあります。

排気ガス削減のための対策

自動車の排気ガスによる環境負荷や人体への影響を減らすためには、様々なレベルでの対策が必要です。国や自治体による規制や取り組みに加え、私たち自動車を運転する一人ひとりが日々の行動を見直すことも非常に重要です。これらの対策を組み合わせることで、より効果的に排気ガスを削減しよりきれいな空気と健康的な生活環境を実現できます。

国や自治体の取り組み

国や自治体は、自動車の排気ガス削減のために様々な取り組みを行っています。これには、自動車排出ガス規制の強化があります。有害物質の排出基準値をより厳しく設定することで、自動車メーカーに環境性能の高い車両の開発・普及を促しています。
また、エコカーの導入支援や普及促進、環境負荷の少ない交通システムの整備なども進められています。過去には、自動車公害対策として、交通量の多い地域での排気ガス濃度の測定や、環境基準達成のための排出規制などが実施されてきました。さらに、排気ガスの要因のひとつである工場に対しても、大気汚染防止法に基づき様々な種類の汚染物質に対して規制値が定められ、排出量の抑制や適切な処理が求められています。

自動車運転者ができること

自動車を運転する私たち自身も、排気ガス削減に貢献できることがあります。具体的な対策をいくつかご紹介しますので、自分の生活に合った方法を見つけ出し実践してみてください。

エコドライブの実践

エコドライブは、環境に配慮した自動車の運転方法であり、排気ガス、特にCO2排出量の削減に効果的です。具体的には、「ふんわりアクセル」と呼ばれる、発進時にアクセルをゆっくり踏み込む運転や、加減速の少ない一定速度での走行が推奨されています。車間距離を十分に取ることで、不要なブレーキや加速を減らし、スムーズな運転が可能になります。また、早めにアクセルオフをしてエンジンブレーキを活用することも、燃料の節約と排気ガス削減につながります。
エコドライブを実践することで、燃費が向上しガソリン代の節約になるという経済的なメリットも享受できます。さらに、急な操作が減るため交通事故の予防にもつながり、安全運転の促進にも貢献します。環境省や関係省庁もエコドライブを推奨しており、その普及啓発が進められています。

アイドリングの削減

アイドリングとは、自動車が停車中にエンジンをかけたままにしている状態を指します。不要なアイドリングを削減することは、排気ガス削減に有効な対策の一つです。特に信号待ちや駐車中のアイドリングは、燃料を無駄に消費し、排気ガスを排出するだけでなく、騒音の原因にもなります。環境省の試算によると、たとえ短時間のアイドリングストップであっても、積み重ねることでCO2排出量削減に大きく貢献するとされています。最近の自動車には、停車時に自動でエンジンが停止するアイドリングストップ機能が搭載されているものも増えています。
アイドリングストップが可能な場面では積極的にエンジンを停止することで、排気ガス削減に貢献できます。ただし、安全に関わる状況(踏切、坂道、交通量の多い交差点の先頭など)や、エンジンの再始動に時間がかかる場合など、状況に応じて適切に判断することが重要です。

環境負荷の少ない自動車の利用

環境負荷の少ない自動車を選択し利用することも、排気ガス削減に向けた重要な対策です。近年では、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)といった次世代自動車の開発と普及が進んでいます。EVは走行中に排気ガスを一切排出しないゼロエミッション車であり、HVやPHEVもガソリン車に比べて燃費が良く、排気ガスの排出量を抑えることができます。FCVは水素を燃料として発電しモーターを駆動させるため、排出されるのは水のみです。
これらの自動車は、従来のガソリン車やディーゼル車と比較して、地球温暖化の原因となるCO2や、大気汚染物質の排出量を大幅に削減できます。それぞれの特徴を理解し、自身のライフスタイルや用途に合わせて環境負荷の少ない自動車を選ぶことが、持続可能な交通社会の実現につながります。

公共交通機関の利用

自動車の利用を減らし、公共交通機関を利用することも排気ガス削減に貢献する有効な手段です。バスや電車といった公共交通機関は、一度に多くの人を運ぶことができるため、一人当たりのCO2排出量が自家用車と比べて大幅に少なくなります。特に都市部では、公共交通網が発達しており、自動車を使わずに移動できる機会が多くあります。通勤や買い物など、可能な範囲で公共交通機関を利用することで、自身の排出する排気ガスを削減できます。
また公共交通機関の利用は交通渋滞の緩和にもつながり、結果として地域全体の排気ガス削減にも貢献します。環境省などのデータからも、公共交通機関の利用が環境負荷の低減に寄与することが示されています。

【まとめ】排出量を抑制し有害な排気ガスから身を守ろう!

自動車の排気ガスには、地球温暖化や大気汚染の原因となる様々な有害物質が含まれており、地球環境だけでなく私たちの健康にも深刻な影響を及ぼしています。特に、CO2は地球温暖化を促進し、一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)、粒子状物質といった成分は、呼吸器疾患などの健康被害を引き起こす可能性があります。
これらの問題に対処するためには、国や自治体による排出ガス規制の強化や、環境負荷の少ない自動車の開発・普及といった対策に加え、私たち自動車を利用する一人ひとりが、エコドライブの実践や不要なアイドリングの削減、公共交通機関の積極的な利用など、日々の運転や移動における意識と行動を変えていくことが重要です。排気ガス排出量を抑制し、有害な排気ガスから自身や大切な人々、そして地球環境を守るために、できることから対策に取り組んでいきましょう。