再生可能エネルギーとは?脱炭素との関係やメリットとデメリットを簡単に解説!

近年、「再生可能エネルギー(再エネ)」という言葉を目にする機会が格段に増えました。気候変動対策として世界各国が脱炭素に舵を切る中、エネルギー供給の在り方も大きく変わりつつあります。しかし、再エネという言葉は知っていても、「それが実際にどういったものなのか」「企業の経営にどう関係してくるのか」は、まだ十分に理解されていないことも多いのが現状です。

この記事では、再生可能エネルギーと脱炭素の関係やそのメリット・デメリットについて解説します。

再生可能エネルギーとはどんなエネルギーか?

まずはじめに再生可能エネルギーとはどのようなものなのでしょうか。

再生可能エネルギーとは、その名の通り「自然界に常に存在し、繰り返し使えるエネルギー」を指します。具体的には、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどが代表的な例です。
これらのエネルギーは、石油や石炭といった有限な化石燃料とは異なり、枯渇する心配がなく、燃焼の際に二酸化炭素(CO₂)をほとんど排出しないという特長があります。そのため、再エネは地球温暖化対策の柱として世界中で推進されています。

クリーンエネルギーや自然エネルギーとの違い

「クリーンエネルギー」と「自然エネルギー」という用語は、再生可能エネルギーと関連しながらも異なる意味を持つことがあります。
クリーンエネルギーは、環境への影響が少ないエネルギーを指し、再生可能エネルギーもその一部に含まれるものの、すべてのクリーンエネルギーが再生可能であるわけではありません。たとえば、原子力発電は温室効果ガスを排出しないとしても、放射性廃棄物の問題が残ります。自然エネルギーは、自然現象から得られるエネルギーに特化した意味を持ち、同じく再生可能エネルギーの一部として位置づけられます。

再生可能エネルギーが注目される背景

再エネがここまで注目されるようになった背景には、いくつかの大きな要因があります。まず第一に、気候変動による影響がより深刻に認識されるようになったことが挙げられます。世界各地で猛暑・大雨・干ばつ・森林火災といった異常気象が頻発し、「このままでは経済や人々の生活に甚大な影響が出る」という共通認識が広がりました。

これに対応する形で、国際的には「パリ協定」や「COP(気候変動枠組条約締約国会議)」などの枠組みの中で、各国が温室効果ガスの排出削減を約束し、行動に移し始めています。日本でも「2050年カーボンニュートラル」の宣言以降、再エネの導入目標が大きく引き上げられ、企業にもその対応が求められるようになっています。

さらに、エネルギー安全保障の観点からも、再エネの重要性は高まっています。2022年以降、ウクライナ情勢などの影響でエネルギー価格が世界的に高騰し、特に化石燃料に依存する国々ではエネルギー供給の不安定さが顕在化しました。こうしたリスクへの対応として、自国で調達可能な再エネの活用が注目されているのです。

そして、再エネ技術そのものの進歩とコストの低下も無視できません。かつては高価で導入のハードルが高かった太陽光発電なども、今では設備価格が大幅に下がり、多くの企業や自治体が実現可能な選択肢として導入を始めています。こうした「経済的合理性」と「社会的要請」が重なったことで、再生可能エネルギーはもはや一部の先進的な企業だけでなく、あらゆる業種・規模の企業にとって重要な戦略課題となってきているのです。

再生可能エネルギーの種類と特徴

再生可能エネルギーは、持続可能で環境に優しいエネルギー源として注目されています。このエネルギーにはいくつかの種類があり、それぞれの特徴を理解することが重要です。

再生可能エネルギーの種類

主な種類として、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどが挙げられ、自然の力を利用した発電方法が特徴です。これらの再生可能エネルギーは、温暖化ガスを排出せず、エネルギー資源が枯渇する心配もないため、持続可能な未来を築く鍵となります。それぞれの種類の特徴と利用可能性を把握することで、再生可能エネルギーの効果的な活用が可能となり、地球環境保全への貢献が期待されます。

ここからはそれぞれの再生可能エネルギーの特徴についてご紹介します。

太陽光発電 -仕組みと特徴

太陽光発電は、再生可能エネルギーの中でも最も広く利用されている手法の一つです。太陽の光を直接電気に変える太陽電池モジュール(ソーラーパネル)を使用し、昼間に日射がある限り電気を作り続けることができます。システムは比較的シンプルで、小規模な住宅の屋根から大規模なメガソーラー発電所まで、用途や規模を選ばずに導入できるのが魅力です。
導入コストは以前に比べて大幅に下がっており、自治体や国による補助制度を活用すればさらに初期費用を抑えることが可能です。設置場所としては、自社の工場や倉庫の屋根、遊休地などが有望です。ただし、発電量は天候や季節、昼夜に影響されやすく、安定性に欠ける面があるため、蓄電池との併用や電力の自己消費と売電のバランスを考慮することが重要です。

風力発電 -特徴とメリット

風力発電は、風の力で風車を回し、その回転エネルギーから電気を生み出す方式です。日本でも風の強い地域では陸上風力が多く設置されていますが、近年は洋上風力への期待が高まっています。特に日本は海に囲まれた島国ですから、洋上風力において高いポテンシャルがあります。
風力発電は、設置すれば比較的安定した発電が可能ですが、風が弱いと発電効率が低下するため、立地選定が非常に重要です。また、風車の騒音や景観への影響が問題視されることもあり、地域住民との合意形成も導入の鍵を握ります。

水力発電 -仕組みと特徴

水力発電は、河川やダムの水を利用してタービンを回し、電気を生み出す伝統的な再エネのひとつです。日本は山が多く、水資源に恵まれているため、地理的に相性の良い発電方法とされています。特に最近では、農業用水や小規模な水路を活用する「小水力発電」が注目されています。
水力発電の大きな特徴は、天候に左右されにくく、長期間にわたり安定した電力供給が可能なことです。ベースロード電源としての信頼性も高く、運転コストも比較的安価です。ただし、ダムなど大規模な施設の建設には高い初期投資と長い期間が必要で、自然環境への影響も無視できません。企業が直接参入するケースは少ないものの、地元自治体との連携による小規模発電プロジェクトなどで参画の余地があります。

地熱発電 -仕組みと日本での可能性

地熱発電は、地下に蓄えられた地熱エネルギーを活用し、高温の蒸気や熱水でタービンを回して電気を生み出す方式です。日本は火山帯に位置し、地熱資源に恵まれているにもかかわらず、開発には行政手続きや温泉業との調整といった障壁が多く、普及が進みにくい現状があります。
とはいえ、地熱は気象条件に左右されず、安定して発電できるため、持続可能なエネルギー源として非常に優れています。また、CO₂排出量が非常に少なく、発電所の稼働寿命も長いため、長期的視点では有望な選択肢です。企業としては、開発企業とのパートナーシップや、地熱由来の電力購入を通じて関与する形が現実的でしょう。

バイオマス発電の仕組みとその特性

バイオマス発電は、木材チップ、食品廃棄物、農業残渣、家畜ふん尿など、生物由来の有機物を燃やすか、ガス化・発酵させて電力を作る方式です。廃棄物を有効活用するという点で、環境負荷の低減と資源の循環利用を両立できるメリットがあります。
特に食品業界、林業、農業と関わりのある企業にとっては、自社の副産物や廃棄物を燃料として活用できるため、エネルギーの地産地消を実現できる可能性があります。一方で、燃料の安定供給や燃焼効率、排ガス処理など技術的な課題もあり、導入には専門知識や適切なパートナー選びが不可欠です。

再生可能エネルギーによる発電の現状

再生可能エネルギーは、持続可能な発電方法として世界中で関心を集めており、その活用状況は地域や国によって大きく異なっています。
ここからは世界各国がどのように再生可能エネルギーを活用しているのかについてみていきましょう。

日本での再生可能エネルギーの発電割合

日本における再生可能エネルギーの発電割合は、2021年度で約20.3%に達しています。これは、政府の再生可能エネルギー促進策の影響で、特に太陽光発電は世界で第3位、国土面積あたりの日本の太陽光導入容量は主要国の中で最大級となっています。
地域によっては、再生可能エネルギーが主要な電力供給源となることもありますが、依然として日本全体の電力供給においては化石燃料が主導しています。今後の再生可能エネルギーの発展には、これらのエネルギー源の更なる導入と、電力網の整備が重要なテーマとなります。

世界における再生可能エネルギーの動向

世界全体で見ると、再生可能エネルギーの成長は著しく、多くの国でその導入が進んでいます。特に、欧州諸国や中国では、太陽光発電や風力発電が拡大しており、各国の政策推進が成果を上げています。国連のSDGs(持続可能な開発目標)や気候変動対策の枠組みの下で再生可能エネルギーの重要性が増しており、こうした流れは世界中の国々が共通の目標に向けて協力する形で進んでいます。

最近のデータによると、再生可能エネルギーが全体の電力供給の30%を超える国々が増加しており、これによりエネルギー供給の安定性とコスト効率性の向上が期待されています。さらに、国際的な協力を通じて技術革新と資源の最適化が進められ、国全体が持続可能な未来を築くために再生可能エネルギーの活用をより促進しています。これらを背景に、再生可能エネルギーは今後も多くの国にとって重要な役割を果たし続けるでしょう。

再生可能エネルギーのメリットとデメリット

再生可能エネルギーの最大のメリットは、温室効果ガスをほとんど排出せずに電力を供給できる点です。
火力発電のように化石燃料を燃焼させる必要がないため、温室効果ガスの排出を抑制し、気候変動対策として高く評価されています。これにより、企業のカーボンフットプリントの削減に大きく貢献できます。

また再エネ設備の初期投資は必要ですが、燃料費がかからないため、運用開始後の電力コストは非常に安定します。特に電気代の高騰が懸念される昨今、長期的視点ではコスト削減につながる可能性があります。また、固定価格買取制度(FIT)や非化石証書といった制度を活用することで、追加的な収益やCSR効果も期待できます。

再生可能エネルギーのデメリット:コストや課題をわかりやすく

再生可能エネルギーには多くのメリットがある一方で、「再生可能エネルギーのデメリット」も無視することはできません。その一つに、導入コストの高さが挙げられます。特に、太陽光発電や風力発電といった主力となる発電方式では、設備の設置やメンテナンスに多大な資金が必要となります。この初期投資の負担が、広範な普及の妨げの一因となっています。

さらに、発電の安定性にも課題があります。例えば、太陽光発電は日照時間や天候に大きく影響を受け、雨や曇りの日には発電量が大きく減少します。同様に、風力発電は風速や風向が安定しない場合、効率的な発電が難しくなり、電力供給が不安定になる可能性があります。これらの要因により、地域や気候条件によっては再生可能エネルギーだけで安定的な電力を供給することが難しい場合があるため、従来の火力発電や蓄電池などの技術との併用が求められています。

これらの課題を解決するためには、技術革新や発電効率の向上だけでなく、電力供給に必要なインフラの整備も重要です。同時に、費用対効果を改善し、より柔軟で効率的な電力システムの構築が必要とされています。コスト効率と安定性を両立させる取り組みが進行中ではあるものの、それらが実現されるまでには時間がかかると考えられています。

再生可能エネルギー普及に向けた課題と対策

再生可能エネルギーの普及は、持続可能な社会の実現に不可欠ですが、いくつかの課題に直面しています。
では現在どのような課題が存在し対策を進めているのか具体的な項目についてみていきましょう。

なぜ再生可能エネルギーは普及しないのか?

再生可能エネルギーの普及が進まない理由は多岐にわたります。まず、先ほどもあげた初期投資の大きさがあります。特に太陽光や風力の設備を導入する際、多額の費用がかかるため、中小企業や個人が手を出しにくい状況です。
また、発電した電力を安定的に供給するためには、蓄電技術やバックアップシステムが必要ですが、これも資金や技術の面で課題があります。さらに、国からの支援が不足していることや、化石燃料に依存する経済構造が影響している点も見逃せません。

再生可能エネルギー普及における課題の詳細と対策

再生可能エネルギーの普及には多くの課題が存在します。その中でも特に、発電効率が十分でないことや、発電した電力を長期間安定して貯蔵することの難しさが大きな障害となっています。このような課題の解決に向けて、高性能かつコスト効率の良い蓄電池の導入が求められます。また、発電インフラ全体の見直しや最適化も、持続可能なエネルギー供給の実現に不可欠です。
さらに、国や地域レベルで政策的な支援も重要な要素です。助成金の提供や税制優遇措置を通じて、再生可能エネルギーの導入コストを削減することで、普及を加速させることができます。
加えて、一般市民の理解を深め、彼らの協力を得るためには、再生可能エネルギーの重要性やその導入によるメリットを分かりやすく伝える教育や情報発信が求められています。これらの取り組みを総合的に進めることが、再生可能エネルギー普及の課題の解決へとつながるでしょう。

企業が取り組む脱炭素への動き

企業が脱炭素に向けた取り組みを進めている現状が見受けられます。多くの企業が自社のエネルギー源を再生可能エネルギーに切り替える方針を打ち出しており、これは脱炭素社会の実現に向けた重要なステップと言えます。
たとえば、太陽光発電設備を自社の敷地内に設置したり、風力発電所に投資したりする事例が各地で増加中です。これにより、企業のエネルギーコスト削減や、環境負荷の軽減が実現します。また、こうした活動はサステナビリティを重視する消費者や取引先からの支持を得られるため、市場競争力を高める手段としても注目されています。

脱炭素化は単なる義務ではなく、企業の持続可能性を高める戦略であり、脱炭素社会の構築に向けた取り組みを通じて、新しい価値を創出する動きが広がっています。

【まとめ】再生可能エネルギーへの理解を深めて未来へ繋ごう

再生可能エネルギーは、持続可能な社会を構築するために欠かせない要素です。このエネルギー源は、自然界に存在する資源を基にしているため、長期的に利用できる上、環境に優しいという特長があります。近年、その重要性がますます高まっており、政府や企業、地域社会が一体となって導入を進める動きがみられます。再生可能エネルギーの導入が進むことで、新たな雇用の創出や技術革新が期待され、経済の活性化にも寄与します。

それに伴い、国民一人ひとりが再生可能エネルギーについて理解を深め、意識を高めることも大切です。個人の選択が、エネルギーの利用方法や消費スタイルに影響を及ぼし、持続可能なライフスタイルの実現に向けた第一歩となります。再生可能エネルギーが日常生活に導入されることで、地域の特徴や特産物と結びついた新しいエネルギーの使い方が生まれる可能性も広がります。

未来に向かって、再生可能エネルギーの理解を深め、社会全体での取り組みを進めることが、地球環境の保全や持続可能な発展につながります。地域社会、企業、個人が協力し合い、共に明るい未来を築くために重要な役割を果たすことが期待されています。